義両親との悩みは日仏共通。自分をすり減らさないための「建前」とは?
[連載]フランスから考える結婚と夫婦のカタチ 第6回
結婚とは何だろう。制度なのか、それとも関係性なのか。フランスに暮らしていると、その問いを自然と突きつけられる瞬間がある。
事実婚、PACS(※)、離婚、再構築――日本とは異なるさまざまな選択肢があるなかで、フランスの人々はどのように「ふたりの形」を選び取っているのか。日本との違いはどこにあるのか。
このシリーズでは、パリ近郊に住む筆者(3児の母)が、フランスの日常を通して見えてくる、結婚と夫婦の多様なかたちを考える。日本で「結婚ってどうなの?」と疑問を持ったり、「結婚生活、なんか苦しい」と感じたりしている既婚者の方にぜひ読んでいただきたい。もしかすると、あなたの疑問や悩みを解決するヒントがあるかも?
第六回となる今回は「義実家との付き合いと、その乗り切り方 」について紹介していく。
※PACS(パクス):1999年に導入された、「民事連帯協約」とも呼ばれるパートナーシップ制度。同性・異性カップルが結婚(法律婚)に近い法的な保護(税制・社会保障・財産など)を受けながら、より簡単な手続きで契約や解消が可能。
家族を大事にするフランス。そこには「自分の親」もついてくる

「家族を大事にする国、フランス」。そう聞くと、夫婦が恋人のように寄り添い、尊重し合うロマンチックな姿を想像するかもしれない。
でも、いざ結婚してその輪の中に飛び込んでみると、そこには「夫が妻を大事にする」だけでなく、夫の母親、つまり「義母」やその親族たちもセットでついてくるのだ。
また、フランスでは、週末やバカンスに「家族で集まって長い時間を過ごす」という文化がある。家族とは、自分たち夫婦と子どもだけではない。義理の両親、時には叔父や叔母、いとこも含まれる。
バカンスには義理の実家(だいたい夫サイド)がある田舎の家や別荘へ赴き、何週間も寝食を共にする。青い空の下、豊かな自然に囲まれた庭で、世代を超えて、おいしい手料理を囲んで笑い合う――。
その裏には、妻たちの「本音」が隠れているのだ。
まったく楽しみじゃない……妻たちの「本音」

フランス人の男性と結婚した日本人女性のAさんは、そのリアルをこう語る。
「毎週日曜に、祖父母・おじの一家で集っています。集まる家は持ち回り制で、今週は祖父母の家、来週はおばの家、再来週は私の家……といった感じですね。義祖母もおばもオーガニック信者で、マルシェ(市場)じゃないと絶対に野菜は買わない主義。二人とも料理がものすごくうまいんです」
これだけ聞くと、なんともうらやましい話だが……。
「彼女たちの家に行くときはいいんです。問題は、私の家にみんなが来るとき。私が用意した紅茶のパッケージを見て、フランスのオーガニック認証である『ABマーク』がないとわかった瞬間に『私は飲まない』と拒否されました。
さらに、料理に使った野菜を近所のスーパーで買ったと知るやいなや、『そんなものを息子に食べさせているの!?』と、思いっきり顔をしかめられました」

別の日本人女性Bさんは、バカンスの苦悩を明かしてくれた。
「毎年、バカンスの時期になると必ず、夫の実家に1〜2週間ほど滞在することになっています。メンバーは義理の両親と私たち一家。義実家は田舎だから、広い家と大きな庭があって、馬もいて、子どもたちはいつも楽しみにしています」
ただ、嫁としての本音は「まったく楽しみじゃない」と言う。
「とにかく、その地域ならではの人種差別がひどい。義家族たちは、私を含めたアジア人や黒人、イスラム系の人たちのことを平気で非難するんです。フランスで移民問題があるのは事実だけど、私もこの国では『移民』なのに、目の前で言われたら肩身が狭いですよね。
でも、田舎の人たちだから、もう価値観を変えるのは難しい。たまに来る夫の妹とも気が合わないです。周りに何もないから、どこかへ逃げることもできないです」
筆者の周りでも、「義実家との集まりを楽しみにしている」なんて話は、あまり聞かない。
じゃあ、日本はどうだろうか。
「お盆と正月さえ乗り切れば」家族のつながりが薄い日本

日本でも「義両親が重荷」「帰省が憂うつ」という声はある。でも、フランスと比べると、そこには「引き際」が存在している。
義理の両親と会ったとしても、お昼ご飯を一緒に食べるだけ、夜ご飯を食べて数時間で解散……といった、数時間単位で済ませる人が多い。
おじも、おばも、いとこも呼ぶことは、お盆や正月くらいだ。それさえ乗り切れば、あとは日常のやり取りをほとんどせずに済む。
フランスの粘りっけの強い関係性と比べると、ある種のドライさや気楽さがある。これは、日本ならではの恵まれた環境なのかもしれない。
夫も義母も傷つけないために「建前」を作る

気になるのは、フランスの女性たちの「防衛線の張り方」だ。
フランス人女性のCさんは「あえて義理の両親から遠い場所に住むことにしたの。『夏と冬のバカンスしか会えないね』という理由を作るため。いくら個人の自由が尊重されているフランスとはいえ、相手を傷つけていいわけじゃないからね」という。
Cさんのように「会わなくて済むように、あえて遠くに住む」という人たちは少なくない。
この作戦は万国共通で、日本に住む知人も、あえて「車でしか行けない距離」に家を構えている。徒歩圏内に住んでしまうと、義母が来てしまう恐れがあるからだ。義母は車の運転ができないから「車でしか来られない場所」に住むことがコツらしい。
また、「自分(嫁)」を関係性からフェードアウトさせる人もいる。フランス人女性のDさんは、バカンスの乗り切り方についてこう話す。
「子どもがある程度大きくなってからは、子どもたちだけで義両親の家に行ってもらっているの。まずは義両親に電車代を出して、私たちの家まで迎えにきてもらう。うちに一泊させて、翌朝に子どもたちを連れて、義両親たちの家へ帰らせる。
相手の家に2週間いるくらいなら、1日だけ自分の家に義両親が来る方がはるかにマシ。子どもたちを引き取るときは、私は行かずに夫に迎えに行ってもらっているわ」
夫と義母のプライドを傷つけないために、水面下で様々な策が練られ、家庭の平穏は保たれているのだった。
もうすぐやってくる夏休み。消耗しないためには?

「義理の実家との付き合いが憂うつ」という悩みは、家族の絆が強いフランスでも同じだ。
良い妻(嫁)を演じて我慢する必要はない。でも、ストレートに「行きたくない」と拒絶して、正面から戦うのはオススメしない。義母どころか、夫まで敵に回しかねないからだ。
だから、お互いのプライドを保てるように、会いたくないという「本音」ではなく、何か別の「建前」を、多くの女性たちが作っていた。
もうすぐ夏休みがやってくる。自分がすり減らないための「建前」を探してみてはどうだろうか。
<文/綾部まと>
綾部まと | ライター、作家。明治大学法学部を卒業後、三菱UFJ銀行の法人営業、経済メディア「NewsPicks」で有名なユーザーベースを経て独立。主に経済や恋愛について執筆。フランス在住。 X:@yel_ranunculus Instagram:ayabemato note:綾部まと@フランスの物書き|note |
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綾部まと