「夫婦で過ごす夏休みが憂うつ」を楽にするコツ
[連載]フランスから考える結婚と夫婦のカタチ 第8回
結婚とは何だろう。制度なのか、それとも関係性なのか。フランスに暮らしていると、その問いを自然と突きつけられる瞬間がある。
事実婚、PACS(※)、離婚、再構築――日本とは異なるさまざまな選択肢があるなかで、フランスの人々はどのように「ふたりの形」を選び取っているのか。日本との違いはどこにあるのか。
このシリーズでは、パリ近郊に住む筆者(3児の母)が、フランスの日常を通して見えてくる、結婚と夫婦の多様なかたちを考える。日本で「結婚ってどうなの?」と疑問を持ったり、「結婚生活、なんか苦しい」と感じたりしている既婚者の方にぜひ読んでいただきたい。もしかすると、あなたの疑問や悩みを解決するヒントがあるかも?
第八回となる今回は「夫婦で過ごす、夏休みの乗り切り方」について紹介していく。
※PACS(パクス):1999年に導入された、「民事連帯協約」とも呼ばれるパートナーシップ制度。同性・異性カップルが結婚(法律婚)に近い法的な保護(税制・社会保障・財産など)を受けながら、より簡単な手続きで契約や解消が可能。
「夏休みは2ヶ月」子どもは嬉しいけど、親にとっては……

日本の学校は夏休みが1ヶ月だけど、フランスでは2ヶ月間もある。嬉しそうな子どもたちを横目に、筆者を含む保護者たちは「休みが終わると、ほっとする」というのが本音だったりする。
大人は2か月も休みを取れなくて、だいたい2週間を夏休みとして取る。「2週間もあると、計画立てるの大変じゃない?」「そんなに子どもやパートナーと一緒にいるの、しんどくない?」と思う人もいるだろう。
フランス人の子育て世帯は、どう夏休みを乗り切るのか。大きく分けて、2つのパターンがある。
ひとつは「夫婦別行動」。 たとえば、7月に母親が2週間休みを取って、子どもを母親の実家へ連れていく。8月には父親が2週間休みを取って、父親の実家へ行く。夫婦でバカンスの時期を完全にずらすのだ。
これは、別居中、離婚済み、夫婦で国籍が違う家庭に多い。たしかに「お互いの実家に行くのにパートナーは不要、その方がゆっくりできるし」という、合理的な手ではある。
もうひとつは、夫婦でスケジュールを合わせて、家族全員で旅行へ行くパターンだ。だいたい田舎へ行って、キャンプをしたり、ハイキングをしたり、海で泳いで過ごすことが多い。
一見、まったく違う過ごし方に見える。でも、日本人からするとびっくりしてしまう、ある共通点があるのだ。
「スケジュールはスカスカ」キラキラしてないフランス流バカンスの裏事情

それは、旅行中のスケジュールがスカスカで、予定を詰め込まないということ。あと、「せっかくの長期休みだから、どこか新しい場所へ行こう」とはならないことだ。
多くのフランス人は、毎年夏になると、同じ実家や親戚の別荘、お気に入りの田舎町へと帰っていく。家族との時間を大事にする文化があるのは確かだけど、その裏には、別の理由もある。
まず、昨今の深刻な物価高である。フランス人にとっても、長期の旅行で家族全員分の飛行機代やホテル代を捻出するのは経済的に厳しい。家賃も生活費も上がっているから、これは日本と同じだろう。
日本と違うのは、「外国語を話したくない」ということだ。
ある日、フランス人の友人から「グアダループ(カリブ海にあるフランスの海外県)がおすすめだから、次の夏休みに行ってみて!」と熱弁された。グアダループといえば、フランス本土からは飛行機で何時間もかかる。
「もっと近くに自然が豊かな島ならあるじゃん。どうして、わざわざそこを選ぶの?」と聞くと、「あそこならフランス語が通じるから。せっかくの休みなのに、言葉の通じない国へ行ってまで、ストレスを抱えたくないよ」とのこと。
予定を入れて、時間を気にしながら過ごす。外国語を話す。私たち日本人が夏休みに当たり前にやっていたことも、たしかにストレスとなる一因なのかもしれない。
イベント尽くしの日本流がごまかせる「夫婦仲の悪さ」

日本の夏休みはどうだろう。
「せっかくの長期休みだから」と、海外旅行を計画したり、国内の新しい観光スポットを開拓したりと、アクティブに動き回る人が多い。筆者も日本にいた頃はそうだった。
プール付きの人気ホテルを予約して、毎日何かしらのアクティビティを用意する。予定をびっちりと詰め込んで、いつも時間を意識しながら行動する……。「旅行に行ったのに、なんか疲れた」ということもあった。
でも、これにはメリットもある。あらかじめ計画さえ立てておけば、旅行先で「今日は何しよう」と頭を悩ませる必要がない。
何より、たとえ夫婦仲が冷え切っていても、目の前にたくさん楽しいイベントがあるから、険悪な空気をごまかせるのだ。海や山でアクティビティをして、ご当地グルメを食べて、温泉に入っていれば、まあまあ楽しく過ごすことができる。
「スカスカのスケジュールを過ごすか、毎日話し合って決めていく。ゆったり一緒に過ごす」というフランス流は、夫婦仲がよければ最高だけど、そうじゃないと苦痛でしかない。数日ならまだしも、2週間も一緒にいると、どうしてもギスギスしてくるときもあるだろう。
たしかに、予定を詰め込む日本流の夏休みは、メディアや広告によって作られた「こうあるべき」という一種の呪いだろう。ただ、あまり仲が良くない夫婦にとっては救われている面もあるのだ。
「がんばる夏休み」を手放して、自分の心地よさを選ぶ

いつも同じ場所で予定を空けて過ごすフランス流も、イベントを詰め込んで険悪な空気をやり過ごす日本流も、それぞれに違った意味での「合理性」がある。
もし毎年のプランニングに疲れているなら、フランス流の「馴染みの場所へ行く、何もしない旅」を、夫婦で過ごすのが苦痛なら「夫婦別のバカンス」を取り入れてみるのもいいかもしれない。
大切なのは、誰かの求める「充実した休み」を演出することじゃない。自分にとって、一番ストレスのないカタチを選ぶことなのだから。
<文/綾部まと>
綾部まと | ライター、作家。明治大学法学部を卒業後、三菱UFJ銀行の法人営業、経済メディア「NewsPicks」で有名なユーザーベースを経て独立。主に経済や恋愛について執筆。フランス在住。 X:@yel_ranunculus Instagram:ayabemato note:綾部まと@フランスの物書き|note |
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綾部まと