「夜のお勤め」はマスト?──フランスにおける夫婦間の性事情
[連載]フランスから考える結婚と夫婦のカタチ 第2回
結婚とは何だろう。制度なのか、それとも関係性なのか。フランスに暮らしていると、その問いを自然と突きつけられる瞬間がある。
事実婚、PACS(※)、離婚、再構築――日本とは異なるさまざまな選択肢があるなかで、フランスの人々はどのように「ふたりの形」を選び取っているのか。日本との違いはどこにあるのか。
このシリーズでは、パリ近郊に住む筆者(3児の母)が、フランスの日常を通して見えてくる、結婚と夫婦の多様なかたちを考える。日本で「結婚ってどうなの?」と疑問を持ったり、「結婚生活、なんか苦しい」と感じたりしている既婚者の方にぜひ読んでいただきたい。もしかすると、あなたの疑問や悩みを解決するヒントがあるかも?
第二回となる今回は、夫婦間の性交渉について説明していく。
※PACS(パクス):1999年に導入された、「民事連帯協約」とも呼ばれるパートナーシップ制度。同性・異性カップルが結婚(法律婚)に近い法的な保護(税制・社会保障・財産など)を受けながら、より簡単な手続きで契約や解消が可能。
たとえ夫婦でも「同意のないセックスは違法」

昔は「嫁にもらうなら料理上手と床上手」と言われていた。「夜のお勤め」という言葉があるように、「夫婦ならセックスすべき、拒否してはいけない」という風潮が、いまだ暗黙の了解として残っている。
たしかに「夫に求められた時に、拒否すると不機嫌になる。一週間は口を聞いてくれなくなるから、嫌だけど付き合っている」「寝ている間に、いきなり夫から襲われるから迷惑」という話を聞いたことがある。この手の話は、日本では多い。
でも、フランスではこの「あるある」が覆されつつある。
2026年1月末に「共同生活が、性的関係の義務を生み出すものではない」という法案が、議会で可決された。セックスが「配偶者間の義務」ではなくなるから、セックスレスを離婚の理由として使うこともできなくなった。
この法案を通そうとしてきた人たちが期待しているのは「配偶者によるレイプを防ぐこと」だ。「配偶者にレイプってどういうこと? 夫婦なら同意がなくてもセックスをしてもいいんじゃないの?」と、思う人がいるかもしれない。
今まで夫婦間のセックスについては、法律に書かれていなかった。フランスでは、結婚の義務は「尊重、貞節、扶助および支援」で、婚姻関係にある者同士は「共同生活」を大事にするべき、としている。一方で、配偶者や性については書かれていない。
これからは「婚姻は、性行為への同意が確定的かつ生涯続くものだとみなされる、そういう状態のものであってはならない」と明記される。中世から続いていたあいまいさに、終止符が打たれたのだ。
これは、ある事件がきっかけだった。
夫婦でも、同意ナシのセックスは「レイプ」

2024年に、ジゼル・ぺリコさんの事件の裁判が行われた。ジゼルさんは当時の夫に薬を盛られてレイプされ、十年にわたって彼がインターネットで集めた人たちから、性的暴行を受けていたのだ。当時の夫はレイプの罪で最も重い、禁錮二十年の判決を受けた。
フランスでも1990年以前は「婚姻は性行為の同意」としていた。でも、今では配偶者間の性暴力は禁止されている。同意がない性行為は、たとえ夫婦でも違法。これには驚く人がいるかもしれない。
さらに、2025年11月には、レイプの定義も拡大される。以前は、レイプは「暴力、強制、脅迫または不意打ち」をともなう性行為だった。今では「十分に理解された、具体的で、事前の、撤回可能な」同意がない行為は、すべてレイプになる。沈黙や反応の欠如は、同意したことにならない。
その影響か、日本では「いいムードになったから、なんとなく体の関係を持った」という話はよく聞くけど、フランスではそういった話はまずない。
男の子の家に遊びに行ったとしても、「君とそういうことをしていいかな」と聞かれて、同意をしなければ、手を出されることはない。どんなにイチャイチャしていても、NOと言われれば先には進めない。同意のない性行為は、レイプで訴えられてしまうからだ。
「いやよ、いやよも好きのうち」なんて言葉は、こちらにはない。「男の家に遊びに行ったということは、セックスをしていいと思っているも同然」なんて、都合の良い解釈もない(笑)
フランスの方が安心……と思いきや、実はそうもいかないのだ。
結婚後もずっと「男女の仲」でいなければならないフランス

同意のない性行為は違法なフランスだけど、「それでもやっぱり、夫婦ってセックスするべきだよね」という価値観は、日本以上に強い。
これには「男女の仲じゃなくなったら、夫婦としても終わり」という考え方が根っこにある。だから子どもをシッターさんに預けてデートをするし、子どもがサマーキャンプに行っている間は、夫婦ふたりで旅行をする。寝室を子どもと分けるのは、知っている人も多いだろう。
こんな話があった。ある日本人の女性が、突然、フランス人夫から離婚を言い渡された。理由は「もう君のことを、女性として見ることができなくなった」とのこと。たしかに体の関係はしばらくなかったけど、それなりに会話もあったし、仲が悪いわけじゃなかったから、彼女としては青天の霹靂だったという。
さらに、当時の夫からは「半年はこのアパートの契約を続けるし、三年間分の生活費を渡すから、その間に次の家と仕事を探して。毎月送金だと付き合いが続くから、一括で渡すね。じゃあ、僕は出ていくから」と言い渡されて、取り付く島もなかったんだとか……。
フランスでは、この手の離婚話も多い。彼女のように相手の男性に経済力があったりすると、決断のスピードも早い。
「フランスのマダムは歳をとってもおしゃれ」と言うけれど、彼女たちも必死なのだ。セクシーな下着を身につけたり、きれいな洋服を着たり、いつまでも頑張らなくてはならない。
「おばさん」でも、セックスレスでも許される日本

一方で、日本はどうか。外では身綺麗にしているママたちも、下着をかわいくしたり、家でもおしゃれでいるのは少数派のように思う。着心地のいい、いわゆる「おばさん」ファッションでも許される風潮がある。「女としての魅力がなくなったから」という理由で離婚をした、という例は、ほとんど聞かない。
また、日本では、産後は4人に1人がセックスレスだと言われている。セックスをしていないからと言って、それがフランスのように「夫婦存続の危機」にはならない。男女の仲を続けられている夫婦なんて、特に子どもが生まれた後は少ないように思う。
うちではダサい服装でもオッケーだし、相手から強制されなければセックスをしなくても大丈夫。パートナーに多くを求めない人にとっては、日本の結婚生活の方が楽なのかもしれない。
あなたはパートナーに何を求めますか?
どちらの国の方が幸せ、とは言い切れない。パートナーに何を求めるのか、ということに寄るのだろう。
いつまでも男・女であることを忘れたくないから、夫婦になっても男女の仲でいたいのか。デートは楽しみたいけど、別の人がいいのか。セックスはしたいけど、配偶者とは嫌なのか。
「夫婦ならセックスはマスト」という価値観は、揺らぎつつある。あなたはどうしたら幸せになれるのか。一度、考えてみてはいかがだろうか。
<文/綾部まと>
綾部まと | ライター、作家。明治大学法学部を卒業後、三菱UFJ銀行の法人営業、経済メディア「NewsPicks」で有名なユーザーベースを経て独立。主に経済や恋愛について執筆。フランス在住。 X:@yel_ranunculus Instagram:ayabemato note:綾部まと@フランスの物書き|note |
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綾部まと