夫婦のおサイフ事情──フランスから考える結婚と夫婦のカタチ

フランスから考える結婚のカタチ_第4回
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[連載]フランスから考える結婚と夫婦のカタチ 第4回

結婚とは何だろう。制度なのか、それとも関係性なのか。フランスに暮らしていると、その問いを自然と突きつけられる瞬間がある。

事実婚、PACS()、離婚、再構築――日本とは異なるさまざまな選択肢があるなかで、フランスの人々はどのように「ふたりの形」を選び取っているのか。日本との違いはどこにあるのか。

このシリーズでは、パリ近郊に住む筆者(3児の母)が、フランスの日常を通して見えてくる、結婚と夫婦の多様なかたちを考える。日本で「結婚ってどうなの?」と疑問を持ったり、「結婚生活、なんか苦しい」と感じたりしている既婚者の方にぜひ読んでいただきたい。もしかすると、あなたの疑問や悩みを解決するヒントがあるかも?

第4回となる今回は「夫婦のおサイフ事情」について紹介していく。

PACS(パクス):1999年に導入された、「民事連帯協約」とも呼ばれるパートナーシップ制度。同性・異性カップルが結婚(法律婚)に近い法的な保護(税制・社会保障・財産など)を受けながら、より簡単な手続きで契約や解消が可能。

共有の財布で「家計は折半」のフランス

共有の財布で「家計は折半」のフランス

日本で定期的に巻き起こる「おごる・おごられ論争」。昔ほどではないにしても「男性が払うべき」という価値観は、今でも根強い。この感覚は結婚しても続き、日本では多くの家庭で、夫が家計のほとんどを担っている。

一方で、フランスではどうか。何歳でも女性は男性からプリンセス扱いしてもらえる恋愛大国、もちろんお金も……と思いきや、実はそうではない。

フランスのカップルのうち約64.0%が生活費を完全に折半、あるいは収入に応じて分担している。日本のように、夫(または片方のパートナー)が家計のほぼすべてを支払っている割合は、約17.0%に過ぎない。

この価値観を支えているのは、銀行の「共同口座」だ。夫婦両方の名義で作ることができる、日本にはない仕組みである。

筆者の友人夫婦も、このシステムを活用している。毎月、あらかじめ合意した金額を各自の給与口座からこの共同口座へ送金し、家賃や食費、子どもの教育費にいたるまで、家庭のあらゆる支出はこの口座に紐付いたカードで決済しているという。フランスのカップルの約63.0%が、このかたちで生活を営んでいる。

収入差があっても、極端なものでなければ「割り勘」。友人夫婦の旦那いわく、「愛していることと、お金を払うことは別」なんだとか……。相手を自立した人間として尊重する、ある種の男女平等なのかもしれない。

「デートでも結婚しても」男性が負担する日本

「デートでも結婚しても」男性が負担する日本

日本では、約56.4%の世帯で夫が半分以上の家計を負担している。

かつて銀行員として働いていた筆者は、公私ともに、家庭のおサイフ事情を垣間見てきた。やはり女性が働いていても、男性が多めに負担している世帯がほとんどだった。

女性が払うのは生活費の一部や、子どもの習い事が多い印象がある。余談だけど「夫に習い事の金額がバレると『そんな高い月謝ならやめさせろ』と言われるから私が払ってる」という女性もいた。

お金の管理面では、フランスのような共同口座はないけれど、どちらか一方の口座に資金をまとめて、そこから家族カードで引き落とすという手がある。ちなみに、これは筆者も日本に住んでいた頃に試したけど、うまくいかなかった。

どこまでが「家計」でどこからが「個人」の出費なのか線引きが曖昧になるし、余ったお金が「片方の口座」に貯まることに、もう片方が嫌な気持ちになる(らしい)。

その結果、「家賃や光熱費の引き落としは夫で、生活費は妻」ということに落ち着いた。この方法をとる家庭は多いけど、都市部では固定費を負担する側が多く払うことになる。

男性は「デートの時には多めに払ってたけど、これって結婚後も続くの? 妻も働いてるのに?」と考えがちで、女性は「私の方が子どもの面倒を長く見ているんだから、夫が多く払って当然」と思う。

家事育児の時間はお金に換算できないから、よけいに不透明で、答えがでずにモヤモヤする……。そんな「ブラックボックス」な家計管理の限界を、日本は感じやすいように思う。

男女の賃金差が少ないフランス
確定申告で「お互いの収入はバレる」

男女の賃金差が少ないフランス。確定申告で「お互いの収入はバレる」

どうしてフランスでは、お金の面で男女平等ができるのだろうか。

その答えは、日仏の決定的な「賃金格差」の差が示している。男女の賃金格差はフランスが12.7%なのに対し、日本では21.3%。収入の差が少なければ、生活費も対等に負担するというのは理にかなっている。

ただし、負担の対等が成立するためには夫婦でお互いの収入を知っていなくてはいけない。日本では、会社員であれば確定申告を個人で行う必要がないため、相手の年収やボーナスの額を知らないことも多い。

でも、フランスでは、そうもいかない。夫婦やPACS(結婚とは異なる形で、共同生活を送る二人の権利を法的に保護するパートナーシップ制度)を結んでいるカップルは、原則として共同で確定申告を行う義務がある。会社員でも全員申告が必須で、一枚の申告書にお互いの収入を並べて記入し、署名する。ブラックボックスにしておけないのだ。

だからといって、財産をすべて共有しなきゃいけないわけではない。フランスでは結婚する時に「財産分離制」を選ぶことができて、約17.0%が選択している。PACSでも、デフォルトでこの財産分離制が適用される。

PACSを選んだフランス人女性に、理由を聞いたら「財産を夫婦共有にしたくない。結婚だと、別れたら半分持っていかれるし」とのこと。彼女は最近出産をしたけど、やはり籍は入れない方針だ。

愛情があるからといって、相手の財布を自分のものだとは思わない。自分の将来を相手の経済力に委ねない。たしかに素晴らしいことだけど、いつも「半分ずつ」を求められるこのシステムは、本当に女性にとって心地よいものなのだろうか。

たとえ恋愛対象でも「割り勘」

たとえ恋愛対象でも「割り勘」

筆者はかつて日本で、デートで割り勘にされると「あ、恋愛対象として見られてない」と感じていた。お金を払うことは、相手への愛情を示すツールだったように思う。

日本では結婚しても、たとえ妻が夫と同じくらい稼いでいても、家計の負担をきっちり半分にしているケースは少ない。籍を入れるときに「財産分離制」などの契約を公証役場でする割合は、1%にも満たない。

唯一見かけたのは、遅くに結婚した経営者くらいだろうか。社員から「僕たちの努力で築いた会社の財産を、妻にすべて持っていかれるのは嫌だ」という声が上がり、財産分離制を選んで、周りを納得させていた。

フランスでは、たとえデートでいい感じになったとしても、ほとんどは割り勘だ。カフェで片方が全部払うことはあっても、それは「男だから」というよりも「少額だから、支払いが手間」という理由である。しかも「次は君が出してね」という暗黙の了解がついたりする。

デートの場所選びでも同じだ。フランスでは公園の散歩や、自宅での手料理、車で田舎へ出かけるといった、お金をかけないデートが多い。

ある日本人の女友だちは「フランス人の男性と一緒に公園を散歩していたら、口説いてきて驚いた。日本なら、いい雰囲気のレストランで告白するよね」という。

フランスでは、好きの度合いによって、かける金額が変わるという概念が薄い。ちなみに、彼女は「彼からは一回目のデートで割り勘にされて、友だち枠だと思ってたから、よけいにびっくりした」と語る。

公園デート

デートでどちらが払うべきか、家計の管理をどうするべきか。国が変われば常識も変わる。そして、同じ国でも一筋縄ではいかない。つまり、誰にでも適用できる「正解」はない。

もし夫婦のおサイフ事情にモヤモヤしている人がいたら、一度立ち止まって、今の状態を把握してみてはいかがだろうか? 自分にとって、ちょうどいいカタチを見つけていく第一歩になるはずだ。

<文/綾部まと>

参考文献:
OpinionWay「Les Français et la gestion du budget en couple」、2022年
 https://www.opinion-way.com/fr/ 
・INSEE「Portrait social de la France」、2015年
 https://www.insee.fr/fr/statistiques/1377810
・La finance pour tous、2015年
 https://www.lafinancepourtous.com/2015/11/05/63-des-couples-francais-mettent-leur-argent-en-commun/ 
・LENDEX「夫婦の家計負担に関する調査」、2023年
 https://suits-woman.jp/lifestyle/284000
・レバウェル看護「お小遣い制の夫婦の割合調査」、2024年
 https://kango-oshigoto.jp/media/article/11543
・European Commission「The gender pay gap situation in the EU」、2024年
 https://commission.europa.eu/strategy-and-policy/policies/justice-and-fundamental-rights/gender-equality/equal-pay/gender-pay-gap-situation-eu_en
・Institute for Social Vision & Design「Inside Japan’s 22.1% Gender Wage Gap」、2026年発表、2024年厚生労働省調査
 https://isvd.or.jp/en/columns/gender-wage-gap-221-unexplained-structure
・INSEE「Plus ou moins mariés」、2014年
 https://www.insee.fr/fr/statistiques/1377810
・一般社団法人日本婚前契約協会「婚前契約の普及率調査」、2023年

 https://konzen-keiyaku.com/research


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